紀伊半島の環境保と地域持続性ネットワーク 紀伊・環境保全&持続性研究所(三重県津市)
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  <紀伊半島の巨木を訪ねる>

 三重県鈴鹿市  地蔵大マツ

 三重県鈴鹿市西玉垣町にある地蔵大マツを訪れた。国道23号線の白子駅入口交差点を過ぎて四日市方面に走り、西玉垣町の信号を左折し、250mほど行くと、広場の奥に巨大なマツが鎮座している。あちこちの巨木を見て歩いたが、最初の出会いの時に、思わず心の中で「おー、すごい」と感動することがあるが、この地蔵大マツに出会った時もそうであった。

 本ホームページの「紀伊半島の巨木を訪ねる」でこれまでに34本の巨樹を紹介してきたが、マツは今回が初めてであり、貴重である。このマツの種類はクロマツで、幹の太さは6.7m、枝振りが東西32m、南北26m、樹高約20mであり、見事な樹形で、枝振りもマツ特有の立派なものである。三重県の天然記念物に指定されている。大マツの傍らに、こじんまりとした地蔵堂がある。

 地蔵大マツの案内板によると、このマツは、飛鳥時代に蘇我氏が物部氏を滅ぼして仏像以外への礼拝を禁止したために、それまで地元の人達が礼拝していた石像をそばの堀に沈め、密かにこの場所を後世に伝えるためにマツの木を植えて目印にしたのが、この地蔵大松の由来と伝えられている。そして、江戸時代の享保年間に、干ばつで稲が枯死しそうになった時に、地蔵大マツの近くの湿地を堀り、湧水堀の工事をしたところ、地蔵像が出土したので、大マツのそばに地蔵堂が建てられたとされている。物部氏が滅亡したのが紀元587年であるので、その後に植樹されたという伝説が正しいとすると、この大マツの樹齢は1400年余となる。

 ところで、近年は、マツノザイセンチュウによる松枯れが猛威をふるっているが、県の天然記念物を何としても守って欲しいと思う。このマツは、長大な枝が多数の支柱に支えられ、保護の手が行き届いていることがうかがえる。松枯れは、マツノザイセンチュウという微小な線虫がマツの内部で大量に増殖し、維管束を詰まらせることによってマツを枯死させる。

 マツ枯れを起こさせないためには、(1)周辺が市街地であるので、周辺でのマツの栽培を控えてもらうこと、(2)マツノザイセンチュウの増殖を予防するために殺線虫剤を定期的に幹に潅注施用すること、(3)マツの枝の葉の変色・枯死に地元の方はもとより、巨樹を守りたいという多くの市民もよく注意を払い、松枯れの初期症状を見つけた時には、速やかに、担当者に殺線虫剤を潅注施用するようにしてもらうこと、(4)樹周辺の除草を行うとともに、土壌を肥沃にし過ぎないことなども重要である。
 
(写真をクリックすると拡大します)

鈴鹿市西玉垣町の大マツの全体像。底辺の枝が長大であり、東西32mに枝を広げている。
大マツの脇には地蔵堂が建てられている。大きな枝が切り取られ、切り後には蓋があてがわれ、病菌が侵入するのを防止している。かなり大きな枝が切り取られたようだが、原因は何だったのだろうか。枝部分のマツ枯れであったのだろうか。大きな枝は青色の支柱があてがわれ、折れないように保護されている。
大マツの幹の太さには感嘆してしまう。マツがこの程度の太さになるには数百年では足りないと思う。
大マツの枝ぶりは見事である。松葉の茂りもよく、生育は旺盛だ。

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